2004/07/05 卒論指導レジュメ             010104k 石原佳菜子

 

テーマ 化粧品がもたらす社会的影響と課題

キーワード クロス参入 販売チャネル 無店舗販売

 

1.化粧品の流通と特徴

化粧品業界では、商品がメーカーから消費者にわたるまでの経路(流通)によって大きく「制度品」「一般品」(開放流通品)「無店舗販売」「業務用品」に分類している。成り立ちから制度品は契約に基づいて系列小売店を通じてカウンセリング販売し、一般品はセルフ販売を基本的な販売方法としている。しかし、消費者ニーズの多様化やライフスタイルの変化、さらに小売店の勢力地図の変化に伴い、1980年代からそれぞれの流通を代表するメーカーが、互いの流通にクロス参入しており、現在では、化粧品流通の分類は必要なのかという疑問を持った。

そこで、まずは各流通の特徴を細かくみていきたい。

 

1−1 制度品

 

メーカーが直接、または系列の販売会社、支社、支店、営業所などを通じて契約した小売店に商品を販売する方法を採用しているシステム。制度品化粧品を小売店が販売するにはメーカーと販売契約を結ぶ必要がある。メーカーによって契約の内容は少しずつ異なっており、契約書や小売店の呼び方が違う。資生堂は契約した小売店のことを「チェイン店」、カネボウは「チェーン店」、コーセーは「リングストア」、マックスファクターは「パートナーストア」、アルビオンは「ジョイントストア」、レブロンは「フランチャイズストア」などと呼んでいる。制度品システムそのものとしては、コーナー制度、美容部員制度、消費者組織を持つことが大きな特徴だ。コーナー制度は小売店のスペースの一部をメーカーが占有するもので、立地条件や規模に適応した、効率的な陳列や販売、美容相談を行うための制度である。装飾物や販促ツールなどの費用の一部をメーカーが負担したりすることもある。美容部員制度はそれぞれのメーカーごとに設けられたコーナーで消費者に対して美容相談に応じたり、小売店に対しても新しい商品や技術指導をするとされている。消費者組織もメーカーによって呼び方が異なる。資生堂は「花椿会」、カネボウは「ベル会」、コーセーは「カトレア会」、マックスファクターは「マックスファクタークラブ」、アルビオンは「孔雀会」などとなっている。消費者が小売店店頭でこうした会員として登録しておくと、様々な特典がつくというものだ。
 しかし、このシステムを維持していくには多額の費用がかかるため、化粧品メーカーの中でもわずかしかない。このシステムでは、小売店頭で直接、消費者に接しながら対面でカウンセリングしながら販売するので、高額品の販売に向いていると考えられる。しかし最近は、[1]販売チャネルである化粧品店の減少傾向に歯止めがかからないため、先細りを心配する見方もある。そこでこれらのメーカーのうち大半は低価化粧品を一般品流通やセルフ方式で販売する商品の別会社を設立して対応しています。

主なメーカー
・資生堂 ・カネボウ ・コーセー ・花王(ソフィーナ) ・マックスファクター ・アルビオン ・レブロン

 

1−2 一般品

一般品というのは、基本的にはメーカーが代理店もしくは特約店と呼ばれる問屋に商品を販売するもので、メーカーと問屋が代理店契約、特約店契約を結ぶことはありますが、小売店と販売契約を結んだり、直接取り引きすることはほとんどない。問屋がメーカーから商品を仕入れて、それを小売店に販売する。特定の流通に対して販売するわけではないので販売形態として「開放流通」と呼ばれることもある。

日本の化粧品メーカーの中では、一般品メーカーが最も古い歴史をもっています。現存するメーカーで一番、創業が古いのが1615年(元和元年)創業の柳屋本店。次いで伊勢屋半右衛門商店(現在の伊勢半でキスミーコスメチックスの親会社)が1790年(寛政2年)。以下天野源七商店(一度倒産したが現在のヘチマコロンとして再建)が1882年(明治14年)、桃谷順天館が1885年(明治18年)、山発商店(後の山発産業で現在のヘンケルライオンコスメティックス)が1888年(明治21年)で、制度品メーカーや方も販売メーカーのほとんどが戦後の創業であるのに対して、戦前に創業したところが多いのが特徴だ。一般品メーカーは戦後の制度品全盛時代が訪れるまでは化粧品業界をリードした。有名女優を専属モデルに起用して企業のイメージアップを図るようになったのも、これら一般品メーカーだった。しかし、メーカー数も多く価格競争の多発し、戦後、価格競争を避けるため制度品ブランドを作るなどしたが、先行する制度品メーカーのように小売店を系列化できなかったため、結局、一般品メーカーの直取り引きは成功しなかった。一般品の主な販売先は、まだ制度品メーカーとの取り引きが十分にできないスーパーなどの量販店などだった。ところが、最近では、化粧品に対する消費者の価値観の変化(低価格志向)、販売チャネルの多様化で低価格などが起こり、一般品にもチャンスが開けてきているといえる。化粧品業界の販売ウエートも量販店やコンビニエンスストア、ドラッグストアの比重が高まり始め、必然的に一般品メーカー品が注目されようになってきている。      
 主なメーカー
・エフティ資生堂 ・カネボウホームプロダクツ販売 ・花王 ・ライオン ・日本リーバ ・牛乳石鹸共進社 ・コーセーコスメポート ・マンダム ・キスミーコスメチックス ・桃谷順天館 ・ウテナ ・ジュジュ化粧品 ・クラブコスメチックス ・ピアス ・ダリヤ ・加美乃素本舗 ・柳屋本店 ・黒龍堂 ・黒ばら本舗ほか

 

 

1−3 無店舗販売(訪問販売)

このシステムは、店頭販売によらず販売員が直接、消費者に販売する形態のことをいう。こうした販売方法を最初に採用したのは米国のエイボンといわれていますが、日本では1929年(昭和4年)ポーラ化成工業(当時、現在は同名の会社は製造会社で販売はポーラ化粧品本舗)が名古屋で行ったのが最初だ。販売組織には2通りある。ひとつは、販売会社、支店、営業所などがメーカーによって直接、運営される方式で、この組織の場合は販売員の管理が図りやすく、他社にスカウトされることが少ないという利点がある。もうひとつは、販売会社、支店までがメーカーの直営で、販売員を擁する営業所以下はメーカーと資本関係がない独立した事業者として運営される方式。訪問販売メーカーの多くは、小資本で事業が行えることからこの方式を採用している。この方式の場合は、管理が困難であることから販売員を含め営業所ごとスカウトされるということも起こりうる。
 訪問販売システムを採用しているメーカーの中には、強引な販売方法や禁止されているマルチ商法と紛らわしい販売を行うものもあり、社会問題となった。そのため1976年(昭和51年)消費者の保護を目的にクーリングオフ制度などが盛られた[2]「訪問販売等に関する法律」が施行された。さらに96年(平成7年)の改正ではクーリングオフ期間の延長や禁止行為対象者の拡大など規制が強化された。女性の社会進出で在宅率の低下や規制強化、さらに他の流通との競争激化もあって、化粧品全体に占める訪問販売流通のシェアは下がってきている。こうしたことから、訪問販売メーカーも店頭販売(一般品流通)や通信販売に積極的に進出している。もともと日本メナード化粧品にはグループ会社として一般品メーカーのダリヤがあったが、訪問販売のみであったノエビアが1986年(昭和61年)サナで、ポーラ化粧品本舗が93年(平成4年)にポーラデイリーコスメを設立して一般品流通で店頭販売に参入した。一方、これらのメーカーはじめ他の訪問販売メーカーは新たに通信販売のチャネルにも進出しています。
 主なメーカー
・ポーラ化粧品本舗 ・日本メナード化粧品 ・ノエビア ・エイボンプロダクツ(ネットワーク販売) ・ニュースキンジャパン(同) ・アイスター商事 ・シャンソン化粧品本舗 ・オッペン化粧品 ・アイビー化粧品 ・アルソア本社 ・ナリス化粧品 ・御木本製薬 ・シーボン ・日本ジョセフィン社 ・明化産業(クレオパトラ) ・イオン化粧品ほか

 

 

1−4 無店舗販売(ダイレクトセールス・通信販売) 

通信販売システムは訪問販売と同じように無店舗販売だが、化粧品の流通としては最も新しいものである。(しかし、この事業者も訪問販売等に関する法律で規制されている)再春館製薬所が1932年(昭和7年)に創業して新聞や雑誌に広告を掲載して漢方薬の通信販売を始め、化粧品を74年(昭和49年)から始めた。80年(昭和55年)に創業したファンケルが81年から、さらに翻訳事業を行っていたディーエイチシーが83年(昭和58年)化粧品の通信販売を始めた。最初は実物を評価しないまま購入することに対する消費者の不安もあり、売り上げは伸びなかった。しかしその後、メーカーの商品政策や広告宣伝技術の向上で商品・企業イメージ高め、さらにテレビ・ラジオ・新聞・雑誌などメディアの発達、電話、ファックス、インターネットの普及によって、急成長してきた。

この流通は成長著しい流通であることから、制度品、一般品、訪問販売といった他の流通からの参入も急速に進んでいる。訪問販売メーカーではポーラ化粧品本舗(オルビス)、ノエビア(シンプス)、ナリス化粧品(アネスティ)、シーボン(聖樹)、一般品メーカーではマンダム(システムE/O)、桃谷順天館(イノーヴァ)、そして制度品メーカーでも資生堂(子会社のフルキャストで「ユーシア」)などが参入している。

一方、他の流通からの通販システムへの参入に対して、ファンケル、ディーエイチシーなどの既存通販メーカーは逆に店頭販売へ参入している。ファンケルはデパートやスーパーを手始めにコンビニエンスストアのローソンでの販売も行っていて、一方のディーエイチシーはセブン−イレブンに進出している。これらは通信販売の告知手段を通じて知名度が高くなってきたことが店頭販売への進出のひとつの背景だ。

主なメーカー
・ファンケル ・ディーエイチシー ・再春館製薬 ・ヴァーナル ・オルビス(ポーラ化粧品本舗) ・イーエスエス ・聖樹(シーボン) ・シンプス(ノエビア) ・アネスティ(ナリス化粧品) ・ユーシア(資生堂の子会社フルキャスト) ・システムE/O(マンダム) ・イノーヴァ(桃谷順天館)ほか

 

1−5業務用品

 

業務用品流通の形態は一般品とほぼ同じだ。理・美容院またはエステティックサロンで使用される業務用化粧品をディーラーと呼ばれる代理店(卸)を通じて販売される。流通の特性上、シャンプー・リンス、ヘアカラー、パーマネント剤などが多く、基礎化粧品やメークアップといった化粧品は少なく、化粧品全体に占めるその割合は大きくない。この流通に参入しているのは制度品、一般品メーカーも多く見られるが、一部を除いて中小の頭髪化粧品専業メーカーが多いのが特徴だ。
主なメーカー
・ウエラジャパン ・日本ロレアル ・資生堂 ・ホーユー ・ヘンケルライオンコスメティックス(旧山発産業) ・花王 ・アリミノ ・ミルボン ・セブンツーセブン ・メロス化学 ・タカラベルモントほか



[1] 販売拠点

[2]特定商取引法の中の法律 経済産業省HPより